MaaSとワーケーション

MaaSとは

MaaSは、Mobility as a Serviceの略で、「マース」と読みます。

MaaSとは何かをここでは説明します。また地域の交通課題をMaaSで解決することを検討する上で重要なポイントを説明します。

まず、MaaSの定義を説明します。2015 年の ITS 世界会議で設立されたMaaS Allianceにおいて「MaaS は、いろいろな種類の交通サービスを、 需要に応じて利用できる一つの移動サービスに統合することである」と定義されています。

利用者が、いつでも移動したいところに移動することを実現することがMaaSということになります。

移動手段には、さまざまな種類が存在します。左のイラストにあるように、鉄道、バス、タクシーなどの公共交通がありますし、また自動車やバイクのように所有している移動手段もあります。そして、いま、特に多様化し始めているのが共有型の移動手段です。レンタカーは古くからありますが、もっと気軽に使えるものとしてカーシェア、バイクや自転車のシェアサービスも一般的になってきました。


定義にある移動サービスとは、このようなさまざまな移動手段を統合し、利用者が自由に選択できるものということになります。

提供の仕方はざまざまありますが、昨今ではスマートフォンと通信環境の発達により、スマートフォンアプリケーションから、目的地や移動経路を検索し、交通手段を選択肢、必要によっては予約・チケット発券・支払方法を提供します。

ただし、必ずしもすべての機能を持つ必要はありません。


MaaSは、あくまでも手段です。手段は、需要があって、それを実現するためのものです。

地域の交通課題の解決を図る上で、重要なのはどういった課題・要望(=ニーズ)があるのか明らかにすることです。また、供給側の状況も重要です。地域においてどんな交通手段が提供可能なのか、しっかり整理しておく必要があります。

そのうえで、ニーズにあった技術を選び、運営体制を作ることが重要です。

ワーケーションとは

Workation(ワーケーション)とは、Work(ワーク=仕事)とVacation(バケーション=休暇)をかけあわせた造語です。

ワーケーションとは何か、さまざまな定義があり一概に説明することが難しいのですが、本サイトでは、特に観光地(リゾート地、温泉地、国立公園等)に出かけて仕事を主体的に行うことをワーケーションと定義します。

ワーケーションを構成する要素は、3つあると考えます。

ワーケーションに行く側の観点では、ワーケーションを行う場所には、「働く場所・時間がしっかりある」ことと、「観光要素がある」ことの2つが要素となるでしょう。

ワーケーションを受け入れる観光地側の観点では、観光地の性質上、土日祝日に比較して平日に需要が低い遊休資産を、ワーケーションという平日の需要によって活かすことも要素となるでしょう。

観光地の遊休資産例と活用例

  • 観光案内所

千曲市では、観光案内所がある千曲市総合観光会館に、貸出の機会の少ない大きな和室を使ってコワーキングスペースGororiを開設しました。ワーケーションに来られた方が気軽に仕事ができるようにしています。

  • ホテル・旅館

観光地のホテル・旅館は、比較的平日は宿泊者数が少なくなっています。ワーケーションによって平日の連泊需要を生み出すことで、稼働率の平準化ができる可能性があります。千曲市のホテル・旅館では、部屋に仕事がしやすい机と椅子を準備していたり、セカンドモニタの貸出をしたり、ロビーで仕事できるようにしていたりします。

  • 温泉・足湯

観光地内には立ち寄り温泉や自由に入れる足湯があります。特に足湯は、非日常的な場所でもあり、ワーケーション場所として有望です。千曲市の戸倉上山田温泉街にも数カ所の立ち寄り湯と足湯があり、ワーケーションで仕事ができる場所にしています。

  • 史跡・城跡

史跡や城跡などの名所が観光地内にある場合があります。こういった絶景ポイントはワーケーション場所として有望です。千曲市では、姨捨の棚田、荒砥城などがあり、どこもワーケーションで仕事ができる場所にしています。

  • 寺院・神社

寺院や神社などの名所が観光地内にある場合があります。こういった非日常的な場所もワーケーション場所として有望です。千曲市では、武水別神社、城泉山観音寺(善光寺大本願別院)などがあります。観音寺ではワーケーション内イベントとして瞑想体験、本堂・テラスで仕事をする体験(寺ワーク体験)を提供しています。

  • カフェ・飲食店

観光地内にあるカフェや飲食店は、平日は比較的空いています。ワーケーション中に参加者は手間なくランチが取れることを希望するため、カフェや飲食店の存在は重要です。また閑散時間帯であれば、ワーケーションの場所として最適です。千曲市では、ワーケーション参加者だった方が千曲市に移住し、仕事ができるスペースを持つカフェをオープンしました。

  • 公園・河原・キャンプ場

観光地内にある公園や河原、キャンプ場は、ワーケーションの場所として活用しやすところです。特に比較的多数の人数が集まれる場所として、ワーケーション場所として有望です。千曲市では、戸倉宿キティーパークは絶景を眺めながら仕事ができるポイントであり、また千曲川河川敷にある公園は温泉街から歩いて行ける距離にあり、気軽に行って広い空の下で仕事ができるポイントです。キャンプ場は山に入った市街地から遠いところにあるのでまだ活用できていませんが、非日常的なキャンプと仕事を組み合わせたワーケーションはニーズがあると考えられます。

  • 観光列車

全国各地の鉄道会社では、地域の特色を生かした観光列車を運行していることがあります。形態はさまざまですが、車内で料理を供用する列車では、比較的大きなテーブルを備えていることがあります。また、運行は金土日曜日・祝日に行っていることが多く、平日は運行していないことが多いです。投資して新造・改造した観光列車の稼働率はほぼ半分となっており、平日に活用できる可能性があります。千曲市では、地元の第3セクター鉄道しなの鉄道が運行している観光列車「ろくもん」を使って、列車内で仕事をしながら信州の車窓を楽しめるワーケーショントレインを運行しました。


推奨図書