2021年2月に実験的にタクシー配車機能を開発(こちらの記事を参照)して、その後、すこしずつ機能を拡張してきた温泉MaaSですが、2021年度のワーケーションにおける利用状況を集計してみましたので、その内容を紹介したいと思います。
この記事は、こちらで公開されている「千曲市ワーケーションの2021年度アニュアルレポート」の抜粋とその補足になります。
2021年度のワーケーション開催実績
2021年度は計4回の千曲市ワーケーションウェルカムデイズと、計3回のワーケーションイベントが開催されました。このうち計5回において温泉MaaSが利用されました。
- 第6回 初夏のワーケーション・ウェルカムデイズ
- 第7回 真夏のワーケーション・ウェルカムデイズ
- 第8回 おうちdeワー ケーション※温泉MaaS利用なし
- 第9回 地元deワーケーション
- 第10回 信越トレイン ワーケーション※温泉MaaS利用なし
- 第11回 秋のワーケー ション・ウェルカムデ イズ
- 第12回 冬のワーケー ション・ウェルカムデ イズ
温泉MaaSの利用実績
2021年度の温泉MaaSでは、主に移動にはタクシーを利用できるようにしました。タクシーは温泉MaaSから乗降場所を指定して配車予約できるため、この予約ログデータをOD(Origin:出発地 ‒ Destination:目的地)データとして集計しました。第11回・第12回では路線バスの利用促進も進めましたが、利用データが取得できていないため集計対象外としています。
温泉MaaSでは、温泉MaaSチケット(ワーケーション参加者向けのデジタルポイント)を第7回から運用を開始しました。温泉MaaSチケットでは、タクシー乗車の料金相当の支払いや、提携店舗での料金相当の支払いができます。
今回、データを分析するにあたって、タクシーによる移動とともに、温泉MaaSチケットの店舗利用数も合わせて集計しています。集計結果が下図になります。
温泉MaaSによる回遊促進結果
温泉MaaSは、千曲市ワーケーションにおいてワーケーション参加者が自由にワークスペース・観光スポットを巡ってもらうために開発されました。集計結果から分かる通り、参加者は千曲市内のさまざまな場所にタクシーを使って移動してもらえました。特に多かったのはワーケーションイベントの開催中心地である上山田温泉街(千曲市総合観光会館)からの乗車でした。行き先は、最寄駅の戸倉駅が多かったものの、ワーケーションイベントにおいて開催された各種プログラムの開催場所への移動や、ランチ・カフェの場所への移動も見られました。
温泉MaaSチケットの利用との相関は、さまざまな観点でデータを見ていましたが、有意な相関は見出せませんでした。温泉MaaSチケットで買い物できるからといって、そこに移動していたかというとそうでもないということです。移動している状況を詳細にみると、その多くはやはりワーケーションイベント内のプログラムの開催場所に向かう移動でした。
また温泉MaaSチケットは、そもそもワーケーション参加費のなかで配布されるデジタルポイントです。そのためワーケーション開催期間中に、付与されたデジタルポイントをどのように消費するか参加者の判断に委ねられます。移動で使ってしまえば、買い物で使えません。そういった背景事情から、移動と購買の関係として傾向が見られたのは、移動が多いと購買が少なくなり、またはその逆というものでした。
結論としては、温泉MaaSという仕組みによって回遊促進はされたと言える一方で、さらなる回遊を促すには購買の仕組み(温泉MaaSチケットによる店舗支払い)だけでは弱く、やはりワーケーションイベント内のプログラムによる誘発が必要であるということです。目的地で魅力的なコンテンツが提供されれば、そこに移動する意欲が湧くという至極当たり前のことですが、それがやはり大事であるとも言えます。今年度(2022年度)のワーケーションイベントでも公共交通による回遊促進を意識したプログラム作りをしていく予定です。
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